税理士に修業は必要か

会計士がトイレ掃除!?

 TACニュースという大手の資格試験予備校が毎月出版する雑誌があります。それを受験生時代楽しみにして、実務家の特集は特に念入りに読んでいました。ある時、女性が苦労して公認会計士試験に受かってからの経験談を寄稿していました。

 会計士の業界では就職の時に好不況の波を受けて、ときどき監査法人に就職できない時期があるそうです。不幸にもその女性はそれにあたり、就職できたのが町の税理士事務所でした。

 そこで彼女を待っていたのは、「トイレ掃除」だったそうです。会計士に受かった私にトイレ掃除をさせるのか…、と唖然としたそうです。たいていどこの事務所でも輪番制で掃除当番を設けており、それをさせる慣習があります。

 それにしても若い女性、しかも苦労の末、会計士に受かった自分にそれをさせるってどういう業界なんだと、彼女は相当な屈辱に感じたらしく、怒り心頭な感じでした。その部分の記述が今でも特に印象に残ってます。

寒風の吹きすさぶ雪空の下での洗車

 私の場合は、最初の勤務先の病院では掃除は業者の方がしていたのでする必要がなかったのです。ある会計事務所に転職した時、ガレージのない青空の下の駐車場にとめられたセダン車を毎朝洗車させられるという苦行を味わったことがあります。冬も毎日です、かじかんだ素手で、かなりの苦行でした。

 この業界は所長によっては税理士志望の職員が働くことは「修行」ととらえている人がおり、丁稚奉公がまん延しています。安月給だというのは業界の構造的な仕組みだからしょうがないとしても、この実務以外のことを「修行」と言って課すのはどうなのかという疑問もあります。

 事務所によっては軍隊気質のところだと、意味のない社訓の唱和、3分間スピーチ、寺の坊主の説法を仕事もせずに全員で聞きに行くなどの修行もあります。

これからの業界を変えよう

 このように「地底」や「軍隊」を経験したことにより、これから税理士やフリーランスを目指す皆さんにはより外向きのサービス、お客様への貢献を目的とした研修があるはずと思えるようになりました。厳しい環境に身をおいたからこそ、次の世代にはこういう思いはさせたくないと思うのです。

まとめ

 実務全般のことで経験を積むことは大事です。それは一定期間しないと1年間の仕事のサイクルを理解できないと思います。問題は、そこにたどり着くまでにハードルとして設けてある「修行」です。給料がいまだに現金払いなど、あまりにも前近代的なことが行われているので他の業界の人に理解して頂くのが困難だと思っています。しかし、執事税理士がどんな思いでここまでたどり着いたのかを少しだけでも知っていただけると嬉しいです。

編集後記

 昨日10カ月ぶりくらいに飲みに行ってビールを飲みました。その後寝てたら朝の4時、物凄く気分が悪くなって吐きました。相当お酒に弱くなっているようです。今後は無理してアルコールは飲むまいと思いました。

 そうそう、資格試験の専門学校のTACの学院長、斎藤博明先生が2020年の8月に亡くなられたそうです。会計士、税理士受験生なら誰でも知っている巨人です。先生のコラムはいつも愛読していました。この場を借りて謹んでご冥福をお祈りいたします。

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